好きになってもいいですか。~声優さんと恋をしよう~
第4章 初めての
すると
グイッ
『え、』
ドサッ
「……ねえ、もうおしまい…?」
私は頭が回らなかった
ソファーを立った瞬間に梶さんに腕を引かれ、その勢いでソファーに背中から落ち、仰向けになった私の上に梶さんが覆いかぶさるような形になっていた
「俺、梢ちゃんに触れられるの、嫌じゃない」
そう言って梶さんは私の耳元に顔を寄せて
「むしろ好きかも…」
と呟いた
こういう時、声優というのはズルい職業だ
たとえ相手のことを好きでなくても、かっこよさに赤面してしまうだろう
今の私もそうだ
『か、梶さん!ずっと起きて…!冗談はやめてください…!』
そう言って、私は梶さんの胸を押し返そうとしたが、
「冗談?俺はいつも本気だよ?君が声優のファンなら、よーく俺のこと知ってるでしょ…?」
たしかに
梶さんは冗談なんか言わない人だ
でも、今だけは冗談と思いたい
じゃないと、自分が勘違いしてしまうから…
「あ、そうだ
今度は梢ちゃんのことを触らせてよ」
『!!』
「俺の許可なく触ってきたんだから…
俺も触れていいでしよ?」
そう言って梶さんは
私と同じように頬に手をあてた
『んっ…』
(くすぐったい…っ
けど…嫌じゃない…)
すると今度は前髪を撫でてきた
『…ん…』
さっきとはちがう、この感じ
梶さんの手が気持ちいいと思った
ふと、梶さんに目をやると
ほんのり頬が赤くなっていた
もしかして、私が梶さんに触れたときみたいに
梶さんも私に触れて、高揚してくれてる…?
そう思うとうれしかった
『ふふっ』
「な、なに笑ってんの」
梶さんは赤い頬をもっと赤くしながら言った
『梶さん…可愛いなって…』
そう言った瞬間
梶さんは目を見開いた
前髪を撫でていた手もピタリと止まった
そして
「ご、ごめん」
急に我にかえったように謝りだした
「俺、なにやってんだか…」
さっきの私と同じ反応
『ふふっ大丈夫ですよ?』
「ごめん…」
『そんな、お互いさまです♪』
そう言うと、梶さんはニッコリ笑った
「あ、髪濡れてるまんまだったね
ドライヤーあそこの棚にあるから使っていいよ」
『はい、ありがとうございます』
「じゃあ、俺は明日朝早いからから先に寝てるね」