第17章 最終章・君は小生の宝物
「(……………ん…)」
頬に温かな日が当たり、爽やかな風が吹いているのに気づく。
ここは外なのだろうか…
目を開けたくてもなかなか瞼が重くて開かない。
そして、自分は温かくて心地の良い感触に包まれている。
紅茶に、クッキーに、古い本の香り。
大好きな人の…大好きな香り。
そして、ヒヤリとした冷たいモノが頬に触れると、重かった瞼が魔法の様にパチリと開いた。
「おはようマリアンヌ……そろそろ起きる頃だと思っていたよ……」
「(あ…あ……アンダーテイカー…さん…?)」
マリアンヌの目に飛び込んできたモノ。
それは、細くて長い指で頬を撫で、慈しむ様に優しく自身を見つめる妖しくも美しい黄緑色の瞳。
愛しいアンダーテイカーの顔だった。
「(あ、あの……私……)」
なんだか頭がボンヤリしている。
自分は芝生の上に座っているアンダーテイカーに抱きしめられている様なのだが…この状況がさっぱり理解できなかった。
「ん〜、色々と話してあげなきゃいけない事があるんだけど…まずは、背中は痛まないかい?」
「(せ、背中……ですか??)」
突然そう聞かれてもアンダーテイカーの膝の上で横抱きにされているのだ。
仕方なく少し身じろぎをしてみたが、特に痛む事はなかった。
「(あの…痛くありません……)」
「そうかい…それは良かった。マリアンヌは長い間眠っていたんだよ?気を失う前の事をどこまで覚えているかな?」
「(………………)」
長い間眠っていた?
にわかに信じられないが、マリアンヌは言われた通りに、自身の中に残っているアンダーテイカーとの記憶を呼び起こそうと必死に頭を捻らせた。
確か…
確か自分はアンダーテイカーとビャクと共に豪華客船カンパニア号に乗って、ニューヨークへ行く予定だった筈だ。