第2章 からあげ
「ジョーカ!コレガジョーカ、デスネィ!Mr.アケチ!」
「もう少し控えてもらえるといいんだがな。それでなくとも、貴公は目立つ。.....ん?あれは家康か?」
『信長さまが築いた城下を一度見てみたい!(要訳)』
と駄々を捏ねまくって、やっと念願が叶った南蛮商人のハロルドと、その付き添い兼監視役で同行していた光秀。
城下の人々は見たことがない異人に戦々恐々とし、そこはかとなく距離を置いているが、ハロルドはお構いなしにテンションを上げている。
その横で、光秀が項垂れ加減の家康を見つけたのだった。
「Oh~ッ、イエヤッサン!アイツ、イエヤッサンデスネィ!」
ハロルドの呼び掛けに家康がビクッと肩を揺らす。そのあとすぐに声の正体を見つけて、嫌悪感丸出しの顔をした。
いえやっさんはまだしも『あいつ』呼ばわりが気に食わないのだ。
ハロルドはまだ、日本語が堪能ではない。
周りとの会話の中、聞きよう聞き真似で名前を覚えたのだが、それぞれの関係までは理解できないらしく、たまに『アイツ、○○!』と呼びたがる。
「.....変なのがきた」
「こんなところで、何をしていたんだ?」
「イエヤッサンモ、ジョーカケンブツデスカァ?」
「違うから」
「大方、美穂への貢ぎ物でも探していたんだろう」
「ミツ?」
「貢ぎ物、だ」
「ドーユーイミデスカ?」
「そうだな....。ぷれぜんと、と言ったところか?」
「Oh!Present!Do you love her?」
「は?」
「美穂を愛しているのか?と聞いている」
「な.......っ」
血が頭に昇ったのも、そのせいで耳が熱いことも、全部この変なののせいだ。
「バカ言わないでください」
「He love her」
「Foooooooッ!!!!!」
変なのが地団駄踏んで急に叫び出すから、そこらにいた人間が大層驚いて、蜘蛛の子を散らすように誰もいなくなった。