第3章 手と手
「美穂」
「んー?」
「はい」
「??...わぁ!からあげ!」
差し出した皿の上に、所々焦げた塊が5つ。美穂はそれを一瞬でからあげだと言った。
目が爛々と輝いて、食べて良いかと問われる。
美味しい自信は、まるでない。
「美味しくないよ」
「食べてみないことには分からないでしょう?」
「....吐いても知らないから」
「またまたご冗談を」
カラカラ笑いながら、からあげを1つ摘まんで齧りつく。
ガリッ
「ほら、やっぱり」
「んぅ~、まらまら...ッ」
ようやく噛み切って頬張ると、火通りが良すぎたのか余程堅そうに咀嚼を繰り返す。
「もういいよ、吐き出して」
「やら」
「吐き出せってば」
「やら」
口を覆った両手の隙間から、拒絶の声が漏れる。噛みすぎて顎が疲れるのか、だんだんと休む時間が増える。
それでも最後まで噛みきって飲み下すと、美穂の喉がしなやかにうねった。
「んふふ」
「不味いのに無理して食べなくて良いから」
「美味しかったよ?」
「.....お世辞、どーも」
「ホントだってば~」