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こんなはずじゃなかったのに

第1章 1


「ふふっ……可愛い、川島。もっと声きかせて」

そのあとも、お嬢様はオレにエロすぎるキスをしながら、下も器用におろしてしまった。

お嬢様の身体の重みを心地よく受け止めていると、段々と動きが緩慢になった。

そのままピタリと止まってしまう。

「お嬢様……?」


胸元から規則正しい静かな寝息が聞こえてくる。

お嬢様はオレに触りながら眠ってしまったようだった。

以前から、こういうことはよくあった。

イチャイチャしているとお嬢様がいつの間にか眠ってしまうことが。

お嬢様がいうには、肌を触れ合わせていると安心するらしい。

オレは引き出された熱を持て余したまま、胸の上で眠る可愛らしい女性を抱きしめた。

やさしく、そっと。

頭を撫で、首筋に手を這わせてみる。
パジャマの襟を指で持ち上げた。

オレが選んだブラをきちんと着けている。

計画とはまるで違う結果になってしまったが、今日のところはこれで満足だった。

リベンジは、また次の機会にとっておくことにする。

幸福感に浸っていると、ある疑問が頭の隅をよぎった。

オレの胸のボタンを外すお嬢様の手際の良さは、半端ではなかった。

あのスムーズな動きはかなりの手練れだ。

いったいどこで?だれで練習したのだろう。

オレと出逢う前……?だとしたらゆるせない。

今すぐお嬢様を揺り起こして問い質したかった。

胸の上のお嬢様が微かに身じろぎする。

「川島……川島……すき……」

聞き取れるか、取れないかくらいの声でお嬢様が呟いたのを、オレは聞き逃さなかった。

瞬間、胸の中に巣食った嫉妬の塊が霧散していくのがわかった。

自分でも呆れてしまう。

オレはどこまで現金な男なのだろう。
お嬢様のひとことで、どこまででも舞い上がれる。

「オレもです、お嬢様。オレの方がもっと。ずっと……」

言い聞かせるようにささやく。

もう一度、お嬢様をやさしく抱きしめ直す。

胸の上で眠る愛しい女性の寝息に耳を傾けながら、オレは静かに目を閉じた――。

(The End)


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