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こんなはずじゃなかったのに

第1章 1


「川島、もうお風呂の用意してくれてたの?今日すごく素敵。入っても構わない?」

きた!

「ええ、もちろんです。お嬢様のためにご用意したものですから」

計画通りにお嬢様が動いている。

オレは得体の知れない興奮と、罪悪感とを同時に感じながら次の行動にでた。


お嬢様が脱いだ服を片付け、清潔なバスタオルとバスローブを用意する……というのが今までの習慣だ。

今日はバスローブではなく、オレとおそろいのパジャマを置いておく。下着と一緒に。

お嬢様のスリーサイズは熟知している。

わざわざ測らなくても、身体を抱きしめ撫でていればサイズなどすぐにわかる。

パジャマはオレとのサイズ違い。
オーガニックコットン100%のガーゼ生地だった。
主張しすぎない程度のチェック柄が入っている。

他の着替えは一切、置かない。

お嬢様はオレが選んだ下着をつけて、パジャマを着て出てくるしかない。

「ふ……ふふっ」

思わず声に出して笑ってしまい我にかえった。

こんな姿を見られたら、お嬢様に気持ち悪がられてしまうだろう。……絶対に嫌だ。

緩んだ顔の筋肉を元に戻すと、お嬢様の髪を乾かすためのドライヤーとブラシ、ヘアオイルを取りに向かった。

お嬢様のバスタイムは長い。
最低でも1時間は出てこない。

オレはキッチンで本を片手に、お嬢様が出てくるのを今か今かと待っていた。

冷蔵庫にはお嬢様がすきな天然の炭酸水が、ほどよく冷えている。

風呂から上がったお嬢様は、水分を補給するためにここへくるはずだった。

微かな物音。

お嬢様が風呂からあがったらしい。

きっと今頃タオルでざっと身体を拭いたあと、バスローブを羽織ろうというところだろう。

お嬢様がバスローブがないことに気がつく。
畳んである下着とパジャマに気がつく。

少し考え、オレの仕業だと気がつく。

いぶかしみながら下着をつける。
サイズがピッタリなことに驚くお嬢様。

次いでパジャマを身につける。
その顔には疑問の念が浮かんでいる――。

一連の流れのお嬢様が容易に想像でき、オレはまた声に出して笑いそうになった。


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