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猫恋

第1章 そこにいるのは/黒尾



「うぁー、課題全部終わったぁ…」

 最初は残って話し込んでる子もいたけど、今じゃ少なくなっていた。とりあえず帰り支度を済ませて教室を出た。そのまま昇降口に向かう前に体育館に寄り道した。換気や温度調整の関係か開いてる扉から覗いてみるとバレー部が練習している。
 目を動かせばすぐに黒尾くんも見つかった。やっぱ部活中の黒尾くんも好きだな。

「お、束間、いま帰りか?」
「あー、うん。もう帰るよー」

 たまたまボールを近くにまで取りに来た夜久くんに声をかけられた。さて、邪魔になる前に帰るとしましょう。

「気をつけてなー」
「うん、夜久くんも部活お疲れー」

 そのまま昇降口に向かって歩いていたら後ろから小走り気味な足音が聞こえてきた。

「束間ちゃん」
「ん? あれ? 黒尾くん、部活は?」
「いま休憩中」
「…もしかして私邪魔しちゃった?」
「してねぇよ」

 名前を呼ばれて振り返ると黒尾くんがいた。大好きなバレーをやってるのにここに来るのはおかしいと思って、思い当たることを聞くと思いっきり否定された。でも、黒尾くんの表情はなんか不機嫌そう。

「…ちょっとだけ時間もらっていいか?」
「私はいいけど、部活はいいの?」
「休憩中だから気にすんな」

 腕を掴まれて適当な階段の下のスペースに連れていかれると、強く抱きしめられた。

「…黒尾くん?」
「……」

 何も言ってくれないからどうしたらいいのかわからない。やっぱり…

「観に行っちゃだめなのかなー…」
「いや、それはむしろ大歓迎」
「そうなの?」
「そうなの。ただ…」
「ただ…?」
「俺にも構ってください」

 ……それってつまり

「夜久くんに焼きもち妬いちゃった?」
「妬いちゃう彼氏は嫌ですか?」
「ううん、私もバレーに妬いちゃうからいいよ」
「…なんかごめんなさい」
「でも、バレーしてる黒尾くんも好きだよ? カッコいいし」
「…それは反則でしょうが」

 しばらく黒尾くんが離れてくれなかったので、向う脛を思いっきり蹴ったらようやく離れて部活に行ったのでした。
 でも、たまにこうして思い切った行動をされてしまうと私も心臓がドキドキしすぎて命がいくらあっても足りそうにない。
 
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