第2章 ミサンガの意味
飛影さんと出会って数週間経つ。
また来ていいかと言っときながら来る兆しは無い。
色々聞きたいことあるのにな…淋しく窓を開け綺麗な星々をみていると近くで草が揺れる音がした 。
「…優愛」
「ひ、飛影さん?」
目の前に現れたのは飛影さんだった。
素直に嬉しく思えた一度しか会ってないはずなのに。
私、一目惚れしたのかなぁ
「お久しぶりです、もう会えないかと…」
「…何故俺の名がわかったんだ?」
「え?」
久しぶりの言葉がそれ?
確かに教えられてはいなかった。
何故かあのミサンガを見た時わかったのだ飛影という名だと
「わからないです…でもそのミサンガを見た時に何となく」
「そうか…」
彼は目を逸らし複雑そうな顔をしていた。
「そう!ミサンガ!どうして貴方は私の大切にしていた紅のミサンガを持っているんですか?」
「!」
飛影さんの手首には紅いミサンガが付けてあった。
彼は慌ててそれを隠すがもう遅い
「どうして?確かそのミサンガは……」
あれ?その続きがでない…一生懸命に記憶をたどろうとするが答えは見つからない。
「返して欲しいのか?大切なら…」
飛影さんは切なそうな顔をしている。
「いや付けてて良いと思います。そのミサンガについては大切なすごく大切な人に作ったものだったと思うから」
「…そうか」
そう言った表情は少し穏やかに見えた
「あ、あの折角いらしたのに何もなくてお茶と茶菓子くらいしか!とりあえず中に入って下さい」
飛影さんは窓から入ってきたので
靴は脱ぐように促した。
温かいお茶とマドレーヌをだすと無言でそれを口にしていた。
「私、小さい頃に両親をなくして親戚も友達もまともにいなかったので独りが多かったんです。でも、そんな時両親が残してくれたミサンガだけは心を和らげてくれたんですよ。両親との記憶はミサンガの作り方を教えてくれたことだけですが…ってすみません身の上話をペラペラと」
「別に構わない」
そう言って気に入ったのかお腹が空いていたのかマドレーヌを必死に食べる飛影さん。
「飛影さん、また来てくれますか?」
ドキドキしながら飛影さんの顔を窺いながらたずねる。
「飛影でいい、敬語も使うな」
「えっ」
「また来る」
と靴を履き夜空に溶け込んで行ってしまった。