第1章 【裏】息抜き/あんスタ蓮巳
「プロデュース科の担任?」
「はい。元生徒会で学科のことも理解出来てるから来年はどうかと打診がありまして…」
翌朝、ルームサービスの朝食を受け取って食べているとゆめから切り出されたのは仕事の話だった。
来年から担任を持たないかと話をされて悩んでいたそうだ。ゆめ自身、いろんな学科の生徒から相談を受けたり、それこそゆめにできる範囲でレッスンを見てやったり、企画書の指導なんかもしていたらしい。その行動も評価してゆめに打診したのだろう。
「でも、私もいつ妊娠出来るかもわかりませんし…」
「たしかにそうだな」
結婚してから俺たちは子作りのために避妊はしていなかった。しかし、お互い仕事もあってちょうど良い日に致すことができなかったりなどしてまだ子宝を授かっていなかった。
「そんな中で担任を持つのはあまりにも無責任な気がして…」
「それで悩んでいたわけか」
「担任になるならきちんと最初から最後までやっていきたいんです」
「そうだな…しかし、現実としては難しいだろう…子どもは授かりものだ」
「そうですね…のんびりさんなんですかね?」
「さぁな」
急いでいるわけではないが、もしかしたらゆめの言う通り少しのんびりしながらこちらに向かっているのかもしれないな。
「のんびりでもいい。ちゃんと来ればいい」
「そうですね…ねぇ、敬人さん」
「なんだ?」
「私、お母さんを知らないのにお母さんにちゃんとなれるんでしょうか?」
俺の肩に頭を預けながらゆめは不安そうな声で聞いてきた。
「大丈夫だ。俺も父親になるのは初めてだ。1人じゃない」
ゆめの頭を撫でながら言うと、ゆめは俺の服を握って頷いた。