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鬼灯の冷徹 *短編集*

第12章 アップルパイ



「甘酸っぱいってどんな味だっけ?」

独り言のように呟いた。
目の前にいる彼女は、コテンと首をかしげた。

「ピュ〇グミ?」

「いや、そうだけどそうじゃなくて」

よくわからないとまたお菓子作りを再開した彼女の背を
じっと見つめる。

と付き合い始めて早何百年

付き合い始めたころは手をつなぐのさえ難しかったのに

今では、キスやハグはもはや絶滅危惧種と化している。


「ねえー??」

「なに?白?」

こちらへ振り返ることもせず、はただひたすら
今日のおやつを作り続けている。

彼女に近づき後ろから抱き締めるといいにおいがした。

僕と同じ石鹸を使っているのに
どうしてのほうがいいにおいするんだろう?

「びっくりしたぁ…包丁持ってるから危ないよ?」

「んー」

の肩に顔をうずめる。

「白ー?オーブン使いたいからちょっとどいてー?」

「んー」

ちょっと視線をずらすと
調理場の上には何やらタルトらしきものが置かれている。

「……アップルパイ?」

「そうだよ。今日はアップルパイの気分だったんだよねー」

「…僕も」

「本当に!?」

以心伝心だねと笑う彼女の笑顔がまぶしい。


「アップルパイ焼いてる間時間ある?」

「あるよ?」

「アップルパイ焼けるまで抱きしめてていい?」

「今日の白はあまえんぼさんだね」

よしよしと頭を撫でてくる彼女にキスを落とすと
嬉しそうにはにかむ。

お返し!
と言いながらほっぺにキスを返してきた彼女の顔は
リンゴのように赤かった。

________________

当然ながら、が作ったアップルパイは
すごくおいしかった。



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