第58章 内番
味噌汁の入った鍋をおたまでかき混ぜる物吉の背に抱き付いて、まるで子供の様に声を掛ける。
物吉「ふふ。では主様、お味噌汁の味見をお願いしても良いですか?」
主「味見するする-!」
そう返答すれば、物吉は小皿に味噌汁を注いで差し出してくれた。
その小皿を受け取って、口を付け一口で流し込んだ。
優しい出汁の風味と、丁度良い味噌の塩味が味覚を刺激する。
主「美味しい!!これは…いりこ出汁?すっごい出汁が効いてて美味しい!!」
亀甲「じゃあご主人様、この玉子焼きの味見もお願いして良いかい?」
主「もちろん!」
箸で玉子焼きを一切れ掴み、口元へ運んでくれる亀甲。何だか照れてしまうが、何故か亀甲には癒され感の方が勝る。
そして口を開いて玉子焼きを受け取り、咀嚼する。
玉子焼きの中には、いんげん豆と人参が細かく刻まれ入っていた。
主「美味しい!!見た目もカラフルで可愛いし、はうう…お昼ご飯が待ちきれないよ~~っ」
物吉「じゃあ僕達も頑張って、早く仕上げちゃいますね!」
亀甲「ご主人様は広間で待っていてくれるかい?」
主「え…手伝わなくて良いの?」
物吉「そんな、主様はゆっくりしていて下さい」
包丁「そうだぞー、主は俺達と遊ぶんだーっ!」
主「わーわー!ちょ、引っ張らなくても行くからぁぁぁっ!」
突然厨に現れた包丁に手を引かれ、広間へと連れて行かれたのだった。