第56章 月輪の神秘(*)
亀甲と約束を交わしてから、もう一ヶ月の月日が経ってしまった。
相変わらず、本丸では亀甲の名前は出ない。
あれから出陣こそまだ早いとこんのすけに止められたが、内番を取り決められる様になった。
炊事・洗濯・掃除・畑・馬・手合わせ…の六つの内番をこんのすけと相談し、取り決めた。
今日は料理当番が燭台切と和泉守。
掃除当番に今剣と長谷部を。
洗濯当番は歌仙と山姥切に。
畑当番に山伏と小狐丸を。
馬当番を鶯丸と堀川に。
手合わせが加州と愛染。
そして近侍は、小烏丸だ。
小烏丸「…ふむ、近侍の仕事というのも大変なものよな。子らの苦労が、手に取る様に分かる…」
主「あはは…ごめんね、私の仕事なのに手伝わせちゃって」
小烏丸「まあ、この父に掛かればこんなもの朝飯前よ…気にするでないぞ?主」
そう言って、黙々と仕事をしてくれる小烏丸。
初めは自らを父だと主張する彼に戸惑いはあったが、それだけの懐の深さと器の大きさを知った。
何より、一緒に居てとても安心感がある事に気が付いた。
小烏丸「ん?ふふ…主よ、そんなに見られてはこの父に穴が開いてしまうやも知れぬぞ?」
主「え!?あ、ごめん!」
小烏丸の横顔は、誰とも例え難い神秘的な美しさを秘めていて…つい見詰めてしまっていた様だ。
クスクスと笑いながら指摘され、目が合った瞬間に頬に熱が集まってくる。