第52章 甦る記憶
主「好き…」
涙よりも潤んでキラキラと光る、左右違う虹彩の瞳を見つめていると…自然と言葉が零れ出た。
ブラック本丸で私が倒れた時、ぼやっとした意識の中で誰かに背中を支えられた事が記憶の端に甦る。
あの声は…確か左文字兄弟だった。あの時支えてくれたのも、私が泣いてしまった時に優しく背を撫でてくれたのも…そう、この優しい手だった。
私は宗三の手を掴み、その指先にそっと口付けた。
宗三「何を…」
主「西洋の文化ではね、指先に口付けるのは賞賛の意味があるんだって」
宗三「賞賛…?」
不思議そうに眉を片方だけ上げる宗三。
ああ、そんな顔をしても…本当に綺麗。
主「私は宗三のこの優しい手が好き。そりゃあ…これからいっぱい時間遡行軍を倒したりするかも知れないけど」
宗三の手は、私にとって魔法の手だから。
言葉が不器用な分、宗三の手は優しくて温かい。
だから、私は宗三のこの手が好きだ。
宗三「手、だけですか?」
そう言って、ゆっくりと宗三は顔を近付けて来た。
私は彼の頬を両手で包み、宗三の鼻先に口付けた。
主「宗三が好きだから、宗三の手が好きなんだよ」
そう言って彼と唇を重ねた…まさにその時だった。
長谷部に渡した全員分の鈴が、けたたましく鳴り響いた。