第32章 お薬を作りましょう(*)
食事を終え何をする訳でも無く縁側に座っていれば、植物の入った籠を両手で持った薬研に話し掛けられた。
薬研「ん?さっきあれだけ泣いてるかと思えば、飯食って少しは落ち着いた様だな」
主「人を調子良い奴みたいに言うー」
薬研「大将、暇なら手伝ってくれねぇか?」
その一言で、私は手入れ部屋の隣に備え付けられた薬を調合したり保管している部屋、薬室に来ていた。
薬研「大将、悪いが其処にあるドクダミを取ってくれ」
主「はい、これだねっ」
薬研「あと、桔梗の葉を一枚」
主「…これ?」
薬研「ああ、それだ」
しかし、これが結構疲れる。薬研の人使いの荒さと言ったら…。
もうかれこれ小一時間位は、このやり取りが続いている。
何よりも、よく分からない薬草の名前を聞いては渡し、聞いては渡しの繰り返し…少々飽きてきてしまった。
薬草「よし。大将、少しこっちに来てくれ」
主「おお、出来たんだね!」
出来たという喜びよりも、雑用終了の喜びの方が実のところ勝っていた。
薬研に呼ばれ、隣に立つ。
見れば、丸い丸薬や粉薬等が数種類出来ていた。
そして何より目を引くのが…ぐつぐつと沸き立つ鍋。
何にも例えられない匂いの、山形の蔵王山の様な深く鮮やかな緑色をした液体が沸々と煮えたぎっていた。
主「お、おどろおどろしいね…」
薬研「良薬口に苦しなんて言葉があるだろう?不味いのはまあ…大目に見てくれ」
あ、不味いんだ…。