第1章 incontro -出会い-

イタリア、ネアポリス。

この街へ引っ越して来たのはつい3ヶ月前。

大通りに店を構える小さなカフェ『フリルト』。

ここのマスターは私の叔父で、父の兄に当たる人。

小さな頃からずっと良くしてくれて温和で穏やかで優しいおじさん。

私はそんな叔父の経営するカフェで、ウェイトレスとして働かせてもらっている。


通りに面した壁だけが大きな一枚ガラスになっていて、そこから差し込む日光が店内を明るくする。

お昼が過ぎると共に来客のピークも終わり、片付けに追われていたのもようやくひと段落。


｢いやぁ、今日は特に忙しかったね。お疲れさん。いつもテキパキありがとうね。少し休んでいいよ｣


マスターが汗をぬぐいながらにこにこと笑う。


｢はい！ありがとうございます！じゃあそろそろ…｣


カウンター越しにそう言った途端、カランカランとドアベルが鳴る。


｢いらっしゃいませ！｣


反射的に笑顔でドアの方に振り返る。


｢チャオ、リゼ｣


ピンクのスーツに金髪カールが相変わらず目立ってる。

見慣れたその姿に、私の表情も自然と明るくなる。


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