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氷華血鎖【鳴門】

第10章 零部・二人の時間


「…そうか」

『…そうか、じゃないってば…何かもう…本当イタチさんって不器用よね』

「不器用?」

『自分自身を騙すのが上手なのに自分自身を労るのは下手』



嘗て…もう亡くなった友に言われた言葉と同じだった。



『もうちょっと褒めてあげたら?弟妹の天使の様な笑顔でも楽になれなかったアタシが貴方のお陰で楽になったんだから』

「………」

『自分自身が労らないならアタシが労るしか無いじゃない』



そっと目の前に差し出された医療忍術が施された小さな手。その手の温もりが目の疲れを癒してくれる。





※※※





救われた。
アタシなんかを知ろうとしてくれたって事に。知ってもなお、変わらずに居てくれる事に。でもアタシのイタチさんを見る目が変わった。どう変わったってのは良く分からないけど変わった事には確かに気付いた。



-ポウ…-



『はい、終わり』

「…すまない」



治療を終えた手を退けると閉じられていた目が少しだけ開かれる。縁側に放り投げた足先を見詰める目を縁取る長い睫毛。男性なのに美人だなぁとか思うけども口には出さない。



『ふあ………』

「………?眠いのか?」



噛み殺したつもりだった欠伸に気付かれたのが恥ずかしくて思いっきりそっぽを向く。



『そりゃまあ…ね』



眠らない事には慣れてるけど、やはり一応人間だし眠い時は眠い。それにアタシはチャクラ量は多い方では無いからチャクラを消費して疲れれば眠たくなる。



「眠るといい」

『うーん…』



どうせ熟睡する前に魘されて起きるだろうけど。



『そう…ね。じゃあ少しだけ…仮眠を…』



月を見上げるのをやめて柱に頭を預けて、ゆっくりと目を閉じた。





※※※





『ん゙…』

「…チヅル?」



チヅルが目を閉じて数分。苦しそうに唸る。柱に身体を預けたチヅルを見やると眉間に皺を寄せて表情を歪めていた。まだ目を閉じてる事から浅い眠りにはついているのだろう。
魘されているところを見ると起こした方がいいのだろうか。しかし眠りを妨げるのも気が引ける。



-ぐらっ-



「!」



身動ぎしたせいで、ぐらりと傾く身体を抱き留める。同じ歳…の筈だが随分と小さな身体。こんなに小さな身体であんな酷な経験を…
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