第8章 零部・心
『正式名称は"乱宮島"。欲望にまみれた酷い島よ』
「………」
『男尊女卑な世界で女の扱いが家畜同然の島。女性の死亡率は世界一って言われてる。何で死ぬか…九割が自らで命を絶ってしまう様な残酷な世界。そんな世界があっては良いと思わなかったから沈めた』
抑揚の無い淡々とした喋りだったが確かにそこには激しい憎悪と怒りが存在していた。
「すまない。無粋な事を聞いた」
『別に。アタシは貴方の事を知ってて貴方はアタシの事を知らない、じゃフェアじゃ無いものね』
「………何処まで知ってる」
『全員、全部よ』
薬草に水をやり終えたチヅルはゆっくり振り返ると泣きそうな顔で微笑んでいた。
『別に他言はしないし、他の人の事も他言する気は無い』
と言う事は…奴の正体も知っていると言う事か。
『さてと…じゃあ夕食の材料獲りに行こうか』
「…獲る?」
『そ!そろそろ川魚飽きたし今日は海魚獲りに行こうかなー』
勿論、手伝ってくれるよね?と手を引かれてビニールハウスを出る。
※※※
「はぁー…」
丸太椅子に腰掛けて盛大に溜息を吐きながら眺めるのは仲良く忍術の特訓をするチヅの弟妹。練習してるのはどうやら分身の術と変化の術らしい。
「何処まで行ったのかねぇ…」
チヅはイタチと夕飯を獲りに行ってくると出掛けてしまった。今日一日、俺はずっと子守り。絵になるんだよなぁあの二人。仲も良さそう?な感じはしたし。
「みつにぃどうしたの?」
「ずーっとためいきついてる」
そうか。この二人に聞いてみよう。果たして分かるのかどうかは謎だが。
「チヅとイタチってどんな関係?」
「ねぇねといたちにぃに?」
「かんけい…?」
うーん、と幼児達は難しそうに考え込む。
「おともだち?」
「うーん…よくわかんないけど…たぶん、ねぇねはいたちにぃにのこと、すごくしんじてる」
凄く信じてるとは!?それは…アレか?友達としてか?それとも………別の意味なのか。
「じ…じゃあ質問を変えよう!チヅの好みのタイプは?」
「このみのたいぷ?」
「ねぇねのすきなものは、おりょうりとーはっぱをそだてること?」
「えーと…そうじゃなくて…好きな人とか」