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氷華血鎖【鳴門】

第6章 零部・医者


『妹よ。旅の道中、疲れで寝込んでしまったの』

「で…でしたら!俺の村で休んで行って下さい!」

『いや…でも…』

「御礼にはならないかと思いますが…しかし妹君もちゃんと布団で寝た方が休まるかと」

『………』



先程と比べて少し落ち着いては居るが、まだ苦しそうに眠る妹を見つめながらチヅルは考え込む。



「判断はお前に任せる」

『…じゃあ…少しだけ…』

「良かった!山頂に村があるので少し歩けば直ぐなので」





※※※





「何だこりゃ…」



薬草の調達を終えて元の場所に戻れば数名の輩の死体。血の乾き具合からして四半刻は経過してそうだな。



「ZZz…」



餓鬼は薬草探しで疲れて寝ちまってる…のは幸いか。ふと頭上からイタチの烏が降りてくる。



「山頂の村ぁ?」



何でまたそんな所に移動してやがんだか。





※※※





裕福そうではない質素で静かな小さな村。人口も50人も居ない様な山奥の集落。だけど緑は豊かで付近には天然温泉なんかもある…まぁ不便は無さそうな村だった。



「粥、此処に置いとくよ」

『すみません…休ませて貰ってるのにご飯まで…』

「良いんだよ!息子を助けて貰った御礼さ!」



そう言う気風の良い初老の女性は先程助けた男性の母親で色々と手を焼いてくれる。



「最近この辺じゃ盗賊が多くてね…街まで働きに出てる者達もなかなか帰って来れないし買物にも行けやしない」

『………』

「怪我人も増えて薬が足りなくて息子が街まで買いに行ってくれたけど案の定襲われたって話だし…でもお前さん達に助けて貰って幸運だよ」

『あ…いえ…偶然通りがかっただけなんですけど…』



よく喋るお人だ。それで居てカラッと笑う。少し師匠に似てる気がする。



-コンコン-



「チヅル」

『イタチさ…十蔵さん!』



ノックされた部屋に入って来たのはイタチさんと薬草探しに出てた十蔵さん。トシは疲れたのか十蔵さんに抱えられながら眠っていた。



「目的のもん、コレで合ってるか?」

『こんなに沢山!有難う!』

「お…おう」



つい、と視線を逸らされた。まぁそんな事は気にせずトシと薬草を受け取ってトシはマツの横の布団に寝かせる。イタチさんが煎じてくれた薬草に赤身を入れて更に磨り潰す。
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