第16章 嘘、ほんと
あんなことされた後だったのに、頭も回らないくらいの驚きとドキドキでいっぱいだったはずなのに。
何にもなかったような顔で楽しそうに話す彼につられて、久しぶりに飲みすぎた。
あのキス以外彼は私に触れなかったし、翔くんの話も、そういう話もしなかった。
ただ、私の仕事の話とか、家がどこなのかとか、昔飼ってたペットの話だとか、ほんとにもうどうでもよさそうなくだらない話とか。
店を出ると二宮さんは律儀にタクシーで家まで送ってくれて。
「今度会った時また二宮さんとか呼んだら
人前でチューしてお嫁に貰うからね」
なんて悪戯な顔してサラッと帰って行った年下の男の子に、ましてや嵐の二宮さんに「付き合って」だなんて言われて、嫌な気なんてするわけがない。
「…私ってずるいな」
タクシーを降りて数分、色んなことに酔った私は暫く頭を冷やしていた。