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君の声で

第15章 あの人との食事









「…からかわないでください、二宮さん。
 私、二宮さんのこと」



言いかけようとした言葉が、彼の柔らかいそれで塞がれる。












今の状況がわからないまま何度か瞬きをしても、見える景色は変わらない。

近すぎて顔なんて見えない。

わかるのは鼻に当たる彼の髪と、柔らかい唇の感触と、爽やかな香り。

ゆっくりその顔が離れると、伏し目がちの二宮さんの鼻と私の鼻がぶつかって彼と一番近いところで視線が合う。









「………」

「…ほら、今
 俺にもドキッとしてくれた…?」





その容姿とは対照的なボソッと話すかすれた低い声のせいで、私の唇に柔らかい息がかかる。

何が何だかわからない。





「…なにしたか、わかって」

「キス。キスしたの、あなたに」
 


そう言ってまた微笑む彼。





「ふふ、うまくいくよ、俺ら」




早すぎる展開に、それを思い通りにする目の前に座る人は、宇宙人にしか見えなくて。




「大丈夫、俺に任せて」



二宮さんのせいか、久しぶりのキスのせいか、頭が全然回らない。

なんの根拠もない自信ありげな「任せて」。

それは私のポッカリ空いた問題を解決してくれる、そういう意味なんだろうか。






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