第8章 同じ気持ち
その後2人の間に出来た、たった5秒間の間でさえも、今の私には息が詰まりそうなくらい耐え難いもので。
溜めに溜めた息と一緒に、勢いよく出た質問を彼の背中に投げつけてみる。
「しょ、翔君こそ!
どうしてそんな場所から!」
「んああ、怖かったでしょ?」と、振り向いて申し訳なさそうにする彼が説明を始めた。
「マネージャーに送ってもらってさ
公園通りかかったら星が見えて
つい懐かしくなって来ちゃったんだよね」
" 懐かしくなって "
それは彼も私と同じ思い出をこの夜空に見ていた、そういうことだろうか。
そのことに自然と頬が緩む。
ん、緩む?なぜ、緩む?
私が頭の中で自問自答をしていると、そのまま彼が言葉を続けた。
「したらさ、百面相の女の子が
1人で歩いてるから
あぶねぇなあって思って…
よく見るとあなただった、てわけ」
「ひゃ、百面相?
私1人で変な顔してた、の?」
覚えもないその行動を指摘されて、思わず両手で顔を隠す。
「うん、してたしてた
ニヤニヤしたり、眉ひそめたり」
それを思い出したのか、彼が笑いながら私を見る。
思い当たる節がありすぎて口をモゴモゴさせることしか出来ず、何も言えなかった。