第7章 意識
考えたこともなかった。
好きとか嫌いだとか、そうゆう感情じゃなくて、翔くんが隣にいるのは私にとって当たり前で。
もちろん好きだけど、それはなんというか" 家族 "。その言葉が一番しっくりいく気がする。
「つまり、翔様のことを男として
意識したことがないってわけね」
「うん、たぶん」
ないよね?
「側にいてドキドキしたことないの?」
ドキドキ?
ない、よね?
「傍にいてくれたら
頑張らなきゃっていう
やる気は起きるんだけど…、」
昔からそう、もちろん今でも。
なぜか悲しそうな彼を見ると「私がなんとかしなくっちゃ」と、そんな変な気持ちになる。
これが恋、とはいうはずもない。
「やる気って…、」
呆れたように笑う2人になんだか申し訳なくなって「ごめん」と謝った。
「なんだ、俺達の勘違いか」
「お似合いだと思ったんだけどな、2人」
" お似合い "、その言葉に何かがフワッと浮くのがわかった。急にきたその衝動、その何かが飛び出てしまう気がして思わず胸を押さえる。
「何。どうしたの、心臓痛いの?」
「心臓?怖いこと言うなよ。
大丈夫か、主人公名前」
心配する2人の顔に「大丈夫」と答えて。
何故かその時、教室で心配してくれたあの彼の顔をふと思い出して、治まったはずのそれがまた動く。
今度は締め付けられるようその痛み。初めて感じる感覚に訳もわからず、ただ笑うしかなかった。