第5章 変わらないもの
ジャ───────
カフェから一番近くにある水道で、彼が私の手を握ったまま左腕を冷やしてくれた。
「翔君、仕事じゃなかったの…?」
黙って冷やし続けてくれる彼。なんとなく、話しかけずらい雰囲気をその言葉で壊す。
「…マネージャーから連絡あって
もう少し遅くなるって。
だからまだ主人公名前ちゃん残ってんなら
一緒に帰ろうと思って…
したらこんなことになってるし」
そう言って私の赤く腫れた左手を見つめるが、まだ目は合わせてくれない。
「あ、大丈夫だよ。もう痛くないし」
なんて明るく言ってみせても、ダメだった。
「痕残ったらどうすんの?あなた、女の子よ」
私の腕を見ていた彼が今度は私をシッカリ見る。その疑問系は" 質問 "ではなく" 圧力 "。