第4章 翔くん
「主人公名前ちゃん…?」
後ろから声をかけられる。
「あ、翔君」
あれ、仕事じゃないんだっけ…?
私が首を傾げると、彼の視線は私の腕へと向けられ、みるみるうちに眉間にシワが寄せられていく。
「…ちょっと、腕、どうしたの」
「あ、えっと、少しボケッとしてて」
あはは、と笑うと翔くんの顔が一瞬怖くて。
「あ、あの、私がよそ見をしてて…!
それでぶつかってコーヒーが…!」
震える女の子の元へ近づく彼。
「…うん、それより君は大丈夫?」
「だ、大丈夫です…!」
「よかった
じゃあ主人公名前ちゃん、おいで」
そう言って、彼はコーヒーのかかってない方の腕を引っ張った。
「あ、ほんとに大丈夫だから、
ごめんなさい!」
彼に引っ張られながら、今にも泣きそうな女の子にそう言って視線を送る。
火傷している腕は反対なのに。
引かれる腕が少し痛いのは、彼の力加減のせいかもしれない。