第20章 おめでとう
「佳奈!三井君!おめでとう!」
2人に駆け寄って祝福の言葉を伝えると、彼女の美しさと、彼の幸せオーラに涙が出た。
「主人公名前!ありがとう~!!」
「おお!主人公名前さんきゅ」
大学時代とは違う、2人の雰囲気に親のような気もとになる。
ハンカチで涙を拭うと
「翔様…来るって?」
佳奈が周りに気を使いながら、こっそりと私に聞いた。
「…いや、それが連絡とってなくって」
笑いながらそう言った。
家に来たあの日以来、翔くんとは連絡を取ってない。
やっぱりこんなもん、だよね。そう考えたらまた苦しくなる。
「櫻井、来てくれるって連絡入ってたけど」
「まじ!?…って主人公名前?…大丈夫?」
「…え、あ、うん!」
二宮さんの、あのメールを思い出す。逃げないって決めたら彼と会うのがすごく怖くなってきた。
「…翔様と、なんかあった?」
「…ううん、何にもないから苦しくって」
と乾いた笑いが出る。
「でも佳奈。
私、もう逃げないって決めたよ。
今が幸せだなんて、ただの強がりだった。
ちゃんと気持ち、言ってみるから」
「…主人公名前…」
私以上に、私の気持ちを辛く思っていてくれた彼女。こんなめでたい席にも関わらず、こんな暗い話をしてしまって申し訳なく思ったけれど。
「ったく、大体櫻井がしっかりするべきだろ!
大学時代、あんなに俺が
主人公名前のこと誉めまくって
付き合えよ的な流れになるように
頑張ったのに」
三井君がその思いを明るく変えてくれる。
「え!?な、何それ!
三井君そんなことしたの!?」
「おう、櫻井の前で主人公名前は可愛いし
気きくし、いいやつだって
誉めまくってたぞ、俺!」
「…慶太それ
ありがた迷惑、じゃない?」
「あ、はは、ありがとう」
徐々に式が終わりに近づいても
彼は一向に姿を見せる気配もなかった。