第4章 日常
ーNsideー
「おはよ、翔ちゃん」
「おはよう、カズ」
いつも通りの朝。
いつも通りの翔ちゃんとの挨拶。
毎日の待ち合わせが当たり前のことみたいになってきた気がして嬉しい今日この頃。
あれだけ毎日届いてた嫌がらせの手紙はいつの間にか全く来なくなった。
もしかしたら嫌がらせとか言うほど大袈裟なものじゃなくて、ちょっとしたイタズラとかだったのかもしれないな。
それか俺が知らなかっただけで、ああいう意味不明な手紙を送ることが流行ってたとか?
···んなワケないか。
結局何だったのか分からないままだけど、手紙が届かなくなってかなりホッとしている。
どんなに気にしないと思ってもやっぱりかなりのストレスだったみたいだ。
呼び出しもあれっきりない。
あのよく分からなかった謎の呼び出し。
あの後もしかしたら次こそ1人で来いって呼び出されるんじゃないかと密かに覚悟してみたりしてたんだけど。
誰からもなんの音沙汰もない。
もちろんなくていい。
手紙も呼び出しもなければ、もう翔ちゃんにも心配も迷惑も掛けなくて済む。
すごい覚悟して挑んだわりには何にもなくて肩透かしだったし、結局翔ちゃんに甘えちゃったから自分の中でも微妙な感じで。
正直恐怖心を乗り越えられたかと言われると全然なんだけど、このまま何もなければ自然に忘れられるはず。
翔ちゃんと並んで歩けるだけで幸せで。
ちらりと隣を見れば、今日もキラキラかっこいい翔ちゃんの横顔に胸がときめく。
「何?」
「翔ちゃんは今日もイケメンだなーって思って」
こっそり見てたのがバレちゃったから、素直に伝えてみる。
「何言ってるの」
照れたように笑う翔ちゃんが可愛くて呑気に見惚れてたら
「カズは今日も可愛いよ」
王子さまスマイルで仕返しされた。
翔ちゃんは自分の笑顔の威力知ってんのかな?
俺の心臓壊れちゃうよ···
でもこうやって翔ちゃんにドキドキしてたら、勝手に嫌な記憶も消えていくんじゃないかな、なんてね。