第2章 友だち
「大野はさ、知ってた?」
俺たちの前を歩く二人を指しながら、隣の大野に聞く。
もちろん声は抑えてる。
大野はフルフルと首を振った。
「知らなかった。松本くんは?」
大野も前を気にして小さい声だ。
「俺も」
翔の気持ちは知ってたけどね。
それはとりあえず黙っておく。
「びっくりしたよね」
「あれで驚いてたの?普通に聞きにくいこと聞きに行くからこっちが驚いたよ」
確かに驚いた顔してたけどさ。
すぐに普通な顔して話しかけてたじゃん。
「だって聞かなきゃ分からないじゃん」
そりゃそうだけど。
あの空気の中よく聞けたよ。
「松本くんは櫻井くんといつから仲良いの?」
急に話が変わる。
そういえば大野と話すの初めてだな。
初めての会話がヒソヒソ話って···
しかもその話題ならもう声小さくする必要なくない?
なんかおかしくなってきて
「ふふっ」
思わず笑ってしまった。
「え?何?」
突然笑われた大野は怪訝な顔をする。
「いや、ごめん。大野を笑ったわけじゃなくてさ。俺たちちゃんと話すの初めてなのに、なんでヒソヒソ話してんだろと思ってさ」
「本当だ」
大野も笑い出す。
「俺と翔は中1からの付き合い」
「へぇ、俺とニノと一緒だ」
大野もその頃から二宮のこと好きなのかな。
本当に俺たち似ているのかもしれない。
「松本くんてさ···」
「潤」
何か言い掛けた大野を思わず遮る。
「え?」
「俺の名前。潤でいいよ」
一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑顔になる。
「分かった。俺も智でいいよ」
気付いたら翔と二宮がこっちを見てた。
「俺も潤くんて呼んでいい?」
「いいけど···別に呼び捨てでいいよ?」
「うん···でもなんか潤くんのがしっくりくるから」
俺には何だか分からないが、まぁ何でもいい。
「俺はニノって呼んでいいの?」
「うん。みんなそう呼ぶから」
みんなねぇ···翔は違うみたいだけどね。
ま、言わないでおいてやろう。
「じゃあ俺は智くんて呼ぼうかな」
「何でもいいよ。じゃあ俺は翔くんで」
それぞれに呼び方を決めて。
なんか高校生がわざわざ何やってんだって思わなくもないけど。
ちょっとお互いの距離が縮まった気がした。