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死の舞踏

第4章 剔抉


あの後。優凪と織田作は依頼主の元へ戻った。
猫を引き渡すと、依頼主ーーフロント企業の幹部愛人の薄い形の良い唇が弧を描いた。

「ふふ、ありがとう」

涼やかに響く声。真紅の胸元の空いたドレス、黒のコートに身を包んでいる。
彼女は手座げ袋からひょっこり顔を出した猫の顎下をゆるりと撫でた。ごろごろと猫が気持ちよさそうな声で鳴く。

「マフィアの何でも屋さんなんて、本当にいるのね」
「はい」
「ふふっ、そこは律儀に返事するところじゃないでしょう?」
クスリと美女が笑う。優凪はというと、返事をする織田作の斜め後ろから居心地悪げにそれを眺めていた。

……自分とは別次元の人間。本能的にそう優凪は感じ取ったのだろう。

「お嬢ちゃん」

すると突然、先程まで遠くから眺めていた顔が眼前に降ってきた。
白い肌、すっと通った鼻筋、何者をも魅了してしまいそうな鋭く寂しい眼差しが、彼女を射抜く。

ぽん、、と頭を撫でられた。

「可愛らしいマフィアさんもいたものね?」

キョトンとして顔を上げれば、美女は目を細めて自分を見ている。
くすりと笑ってお疲れ様、と耳元で囁かれた。

頬を赤らめて後ずさると、ふふと笑って依頼主は優凪から離れた。
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