第3章 12月10日 R18
12月10日朝。月曜日の朝。
学校の教室。わたしの席は廊下側の端の一番後ろ。
「おはよーー!! 市川ーー!」
元気よく、前の席から振り返ってくれて、挨拶してきたのは親友の美來ちゃん。この子の席は わたしの前。
「…………おはよー美來ちゃん…………」
震えながら声を出して、カバンを机に置いて座ったのは わたし。戦々恐々としている。はっきりと言おう。
負け戦だから!初めに言ったじゃん。無理だって。
無理だしぃぃ!! 結局土日も頑張ったよ!寝る間も惜しんで頑張った。田中先生も一切邪魔してこなかったし。いや当たり前だけどね。あの先生、デザインで舐めた態度したら、恐いからね。
ーーで! 課題は出来た。課題は出来たけど、やっぱり納得がいかない。いい加減なモノを提出するのは、わたしのポリシーに反する。
いや、忘れてたくせに何偉そうーな事言ってんだと思うけど、やっぱりここが芸術の人間で、美を追求したい、納得作品を描きたい、と欲求が湧きまして…。
総合的に言えば、
奴隷は、もう確定で。
鬼!鬼教師!
初めから分かってたし、
あの先生、わたしの性格分かってるし!だから笑ってたんだ。納得いかないと提出しないって。
「……子牛を乗ーせーて……」
「は?何、急に歌ってんの。市川」
美來ちゃんは不思議がる。
彼女には聞こえないらしい。
ドナドナが 遠くから聴こえるよ。
これから卒業式まで遊べないし、バイト出来ないし、先生の歪んだ虐めに遭うんだ。あーヤダヤダ。格好良くても中身がダメだとダメだね。
鬼だよ鬼。好きだと思ったけど、結局遊ばれてるだけだって気がついたしね。やっぱりこの先生に恋なんかしちゃいけないよ。
「そういやさー、田中先生とさっきすれ違ったけど、なんか凄く楽しそうだったよ! なんかあったのかなぁ?」
美來ちゃんの無邪気な言葉の刃が心を抉る。やめてやめてやめて!そんな情報いらないし。
「……さぁぁっぱり知らないし」
わたしは ぶっきら棒に喋っていた。