第2章 12月7日 夜
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「市川、どうした? 早く来い。 乗らないのか?」
田中先生が、車を校門前に止めて窓から、わたしを呼ぶけど、近くに女子がいないか、確認していた。
万が一、こんな大変な所を誰かに見られてしまえば、リンチどころかイジメに発展してしまう。想像しただけで寒気がしてきて、鳥肌が立つ。
右左、前後、確認オッケー、うん、
校庭にも駐車場にも、肉食動物は潜んでない。大丈夫!今がチャンス!
瞬足で漆黒の国産車に乗り込んで、助手席に座った途端、顔がふにゃりと溶けていた。
「うわぁ……先生の車、格好良い……! 凄すぎです!お洒落過ぎ……」
座った座席シートは、チョコレート色の革生地で座り心地良く、内装は黒を基調として高級感があり、先生のデザインへの拘りが、車には沢山散らばっていた。
「いつも家族で乗るような、ファミリータイプの乗用車とは大違いですね。先生って車がお好きなんですね」
ニコニコしながら見渡した。
ハンドルやモニター部分、
至る所の細部まで拘る所は、流石、
デザイン好きな先生だなぁって思った。
「ああ、内装のデザインを考えたりするのが好きなんだよな、俺。拘り出したら、切りが無くてな。市川も大学行ったらやってみろよ、結構考えたりするのが面白いぜ?」
田中先生は目を輝やかせて、笑う。小さな子供みたいで、ちょっと面白かった。
「何笑ってんだ、市川」
「だって先生、楽しそうで、子供みたいで……」
クスクス笑っていた間、フレグランス調の香りと、先生の甘い香りに包まれ、心臓の鼓動を早めてしまう。車内は、先生でいっぱいだった。
「市川? どうした? 急に黙って…??」
少し恥ずかしい気持ちになり、下を向いた。先生に声をかけられ、視線を元に戻せば、田中先生はいつの間にか、間近で わたしを見つめ、不思議がっていた。