第6章 〜闇夜の邂逅に白き魔術師、驚き好きの鶴も添えて〜 前編
と言うのも、麻衣達はトラップの白煙が出てから、微動だにせず冷静だった。慌てふためく探偵達や、刑事達の隣で固まって動かない。
「へぇ〜、まずは目くらましかい?俺たちから離れるんじゃねぇぜ、主」
「ぼくたちが、ゆびいっぽんふれさせません!」
そして充満している白煙の中で、自信に満ちた台詞を飛ばす。鶴丸と今剣という二振りの付喪神が、主たる麻衣を挟んで守っていた。ところが。驚くことに、彼らの傍には先刻までいた伊達広光の姿がない。げほげほ、と煙に咳き込む安室がそれに気づいて大声を放つ
「皆さん、護衛の伊達さんが消えました!」
「何だと…?!それじゃあ、あの男がキッドだったのか!!」
ゴゴゴゴゴッ。誰かが叫び返した直後、重いものが引きずられる重低音が響く。絶えない現象にら今度は何だと全員が瞬時に身構えた。すると、振動で廊下が小刻みに揺れ始め、白煙で遮られた視界も徐々に晴れる
「なっ?! 隠し部屋の扉が開いてるぞ!キッドの侵入を許しちまった!!」
「「……っ?!!」」
小五郎が岩戸を振り返って焦る声に、全員がバッと後ろを見た。頑丈で分厚い外開きの岩戸が、人一人分のスペースを空けているのだった───