第25章 〜毛利蘭の苦悩〜
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某日、毛利蘭が計画を実行したのは昼ご飯時のこと。場所は米花町内にある高級料理を扱うホテルのレストランで、蘭が居候のコナンと実父の小五郎を連れて行けば、彼女達が待ち合わせしていたとある女性がレストラン前の廊下に立っていた。女性は茶髪を後ろに編み込んで括り、紫苑のパーティドレスを着ていて蘭とコナンに気づいた時は優しい笑みを浮かべていたが、隣の小五郎に目が行った瞬間笑ったままの頬を引攣らせる
「げっ、」そんな声を漏らしたのは、小五郎と女性どちらが先だろうか。こうして予約を取ってまで合っている女性は、毛利蘭の実母で小五郎の別居中の妻である妃絵理だ。蘭は訳あって小学生の時に離婚した二人を自分が仲直りさせて、元の三人で暮らしていた頃に戻そうと必死に気配りしていた。この日もその計画のためにひっそり段取りを組んでいたのだが、夫婦は顔を合わせて早々眉間に皺を寄せて険悪な雰囲気で睨み合いを始めた
「ああ?!なんでお前まで来てんだよ!」
「そんなの決まってるじゃない、蘭とコナンくんに三人でご飯を食べないかって誘われたのよ」
「なっ?!おい蘭、テメェまた俺らを引っ掛けたのか?!」
「あらあら!そんなに私がいるのが嫌なら、貴方がさっさと帰ればいいじゃない!」
「ちょっ……待ってよ二人とも!ここで喧嘩はやめて!」
明から様に不機嫌な顔を隠す事なく、徐々に小声で言葉を荒げてヒートアップしていく両親の口喧嘩。それはいつもの如く始まるもので、蘭はすぐさま割って入ると声を潜めて言い合う両親を注意した。するとすぐに口論が止んでくれたのは良いが、二人の怒りの矛先は次に蘭へと向けられた
「だいたい蘭!私達両方を誘ってるんなら、それをきちんと教えて頂戴!」
「だってお母さん、お父さんも行くってなったら絶対来てくれないじゃない。こうする以外家族で揃うことって滅多にないし!」
「だからってなぁーーー」
「お、おじさんストップ!蘭姉ちゃんも絵理おばさんもホテルの中なんだよ?」
負けじと憤慨している絵理へ言い返す蘭に、小五郎も額に青筋を浮かばせるほど苛立っていて怒鳴ろうとした。しかし、焦りながら今度はコナンも静観をやめて流石にまずいと仲裁するので、毛利親子は一先ずレストランの中に入る事にした。因みに、廊下は幸いな事に通行人いなかった為、身内の喧嘩を見られる事態は見られずにすんだ
