第1章 ハニー・ヌードショー
「そこまでだ。」
ジャギンと金属音とともに男の声がスピーカーから響く。
「なんだお前は!」
彼女の顔を押さえつけていた力がなくなる。即座に目の前を確認すると、先程のカメラマンが大きな銀のピストルをスーツ姿の男の頭に突きつけていた。
「やめろ!」
「もう君の正体は割れてるんだよね。」
客席が騒然とし始める中、彼女は快楽から解放され、肩を上下させていた。やっと『彼』が助ける気になったようだ…。
そう、『彼』は……。
「…まさかお前は…!」
「そう。『魔警団』だ。君を処刑しにきた。」
「まっ」
バァンと銃声が鳴った瞬間、スーツ姿の男の足元に魔法陣が光り始めると、その男の身体はガラスが砕けるように破壊された。
周りの男達は悲鳴を上げて逃げ出す。
「君達は強制送還だね。」
そう言うが早いか、銃を何発も乱射する。その度に薬莢が煙の尾を引いて、床にこぼれていった。
七七七は後ろを確認することができなかったが、男達の足音も悲鳴も消えた。
代わりに客席から悲鳴が上がり、多くの人達が出口から出ていく。
この銃を乱射した男の名は、夢野ミカゲ。この男は人間ではなく、淫魔だ。淫魔というのは、人間の精気を餌にして生きる魔物。
彼は魔界での警察組織である『魔警団』の1人で、日本の淫魔の取締を担当している。
つまり、今しがた彼が『退治』した男達は淫魔だったのだ。