第80章 言って※
「っは、ん・・・、ひゃ・・・あッ!」
唇同士が離れたと思えば、彼の唇はゆっくりと首筋を伝っていった。
首筋にも何度もキスを落とされ、その度に体が跳ねては甘い声を漏らした。
「んっ・・・零・・・っ!」
彼が首筋に、強く吸い付いている。
それに気づいた時には、既に遅かった。
ゆっくり離れた唇の下には、きっと赤い印がついているのだろう。
きちんと確認することはできないが、場所からしてそれは服で隠しにくい場所で。
「見えるとこ・・・は、駄目・・・っ」
「見せておけば良い」
そう言って彼は、一つ、二つと、赤い印を幾つも残し始めていった。
首筋に付け終えると、今度は胸元へと降りてきて。
簡単に前を開くことのできるバスローブは既に乱れ始め、肩の辺りまでは露わになっていた。
「いつもこの姿なら、襲いやすいな」
「・・・冗談に聞こえな・・・っん・・・!」
彼の手が鎖骨辺りからゆっくり肩へと流れるように滑って、バスローブの下へと潜り込んでいく。
くすぐったいのか、感じているのか、最早自分では分からない。
「冗談じゃないからな」
・・・ああ、この目は。
本気の目だ。
その目にゾクゾクとした感覚を覚えている間も、彼は至る所に印を残していった。
「・・・・・・」
そしてバスローブをゆっくり開かれると、肩の傷が現れて。
「・・・ひなた」
「?」
呼ばれた彼の方へ視線を向けると、その傷跡へ優しく唇を落とされた。
「・・・・・・っ」
今となっては、一種の儀式のようなものになってしまった。
彼が私の肩の傷を見ると、唇を触れさせる。
それが彼にとってどんな意味があるのか聞いたことは無いが、恐らく懺悔の意味が強いのだろう。
だからそれを辞めさせることも、気にしなくて良いと言うことも、私にはできなくて。
辞めさせたり、口に出してしまうと、彼は余計に負の感情を抱えてしまいそうだったから。