第76章 聞いて※
「・・・っあ・・・ッ」
ゆっくり、ズルリと彼の指が腟内から引き抜かれて。
いつもよりそれに、大きく喪失感を感じてしまうのは・・・何故だろうか。
「・・・ひなたは、バーボンが嫌いじゃないのか」
「・・・・・・?」
息が上がって頭がぼーっとする中、突拍子も無く、そんな事を問われた。
瞬時に声を出して返事をする体力が無く、アイコンタクトで何故そんな事を聞くのかと尋ねて。
「場合によっては、バーボンでこうなる可能性もある。それが・・・怖く無いのか」
「・・・・・・」
・・・寧ろ、外でバーボンとして彼に会うことがあれば、そういう可能性が一番高いだろう。
そして、そうなっている場合は・・・恐らく良い場面では無いと言える。
「・・・分からない」
例えバーボンでも、彼ということに変わりはない。
それでも、降谷零や安室透を押し殺している彼と接するのは、少し怖い。
あの時の恐怖が・・・残っていないかと言われたら、それもよく分からなくて。
それだけ彼が、他人になりきることが上手いという証拠ではあるんだろうけど。
「怖くないかと言われたら分からない・・・。けど、嫌いかと言われたら・・・嫌いではないよ」
落ち着いてきた呼吸を崩さぬように、ゆっくりと彼の問いに答えた。
「どうして、そんな事聞くの・・・?」
後回しにされていた疑問をようやく口にすると、零は何故か視線を私から逸らして、僅かに顔を顰めた。
「・・・何となく、気になっただけだ」
笑顔と言っても良いのか分からない表情を浮かべながらそう答えられると、徐ろにキスを落とされて。
彼がさっきから様子がおかしいのは、それを気にしていたせいなんだろうかと脳裏で考えては、彼のキスに身を委ねた。
「すまない」
「・・・何、が・・・・・・っいぁ・・・ぁあ・・・ッ!」
まだ唇が触れ合うような距離のまま、何故か謝られて。
その理由を尋ねる間もなく、再び腟内が埋められた。
さっきとは全く違う、質量で。