第75章 貴方が
「・・・どうした?」
確認するように、隣に腰掛ける彼に視線を向ければ、不思議そうに目を丸くする零の姿があって。
それに心底、安心を覚えた。
「おっと・・・。ひなた・・・?」
彼に勢いよく抱きつくと、少しバランスを崩しながらも、しっかりとそれを受け止めてくれて。
ああ、零だ。
間違い無く、彼だ。
そんな当たり前の事を、強く噛み締めた。
「怖がらせて悪かった」
もう一度、頭を撫でられながら謝罪の言葉を口にされて。
それに対して彼の胸に顔を埋めながら首を横に振ると、ゆっくり顔を上げた。
「話す事は山程あるが、まずは食事からだ」
「・・・うん」
僅かに感じた安心感からか、空腹感も同時に襲ってきて。
更に言うことの聞かなくなってしまった体を気遣ってか、彼はベッドまで食事を運んできてくれた。
久しぶりの彼の手料理に何度も口元が緩みながら食事を済ませれば、もう外が暗くなり始めていることに気が付いた。
「・・・さて」
食事を取る前のように二人でベッドに腰かければ、何から話そうかと彼が一言口にして。
「まずは誤解から解かせてもらおうか」
「・・・誤解?」
何の事かと首を傾げれば、彼は真っ直ぐ前を向いたまま話を続けた。
「バーボンのまま、意識無くひなたに接してしまったことはすまなかった。・・・だが、これからバーボンとして接する機会は増えると思っていてくれ」
・・・どういう事。
「組織の仕事が増えるってこと・・・?」
「当たらずも遠からずだな。単刀直入に言うが・・・」
何時にも増して、無駄な言葉を省いている気がする。
それだけ、素早く伝えて起きたいという事だろうか。
そう考える最中、彼は言葉を続けて。
「ひなたが本格的にジンに目をつけられた」
「・・・!」
・・・ついに、その時が来たんだと思った。
以前コナンくんにも忠告はされていたから、覚悟はできていた・・・はずだったのに。