第72章 悪夢を

「ど、どうでした･･･？」
「非常に上手く配置されている。全てが同時に爆発したら、車軸が比重に耐えられず連鎖崩壊するだろう」

ゆっくり立ち上がった彼に様子を伺うと、恐ろしい予想を淡々とした口調で話した。

もし、そうなったら･･･ここにいる私達は本当にただでは済まない。

「成程、悩んでる暇は無さそうですね」

その言葉を聞いた透さんは手早く消火栓を開け、中にあったホースを真ん中から両手で掻き分けた。

その下に置いてあったのは、如何にも怪しげな光を放つ黒い箱で。

「これか」

その存在を確認すると、中にあったホースをズルズルと引き出していった。

「どう、解除できそう？」
「問題ない、よくあるタイプだ。解除方法は分かるよ」

その様子に目をやりながらコナンくんが尋ねると、透さんはその手を止めないままそれに答えた。

･･･恐らく今は安室透なんだろうが、どこか見え隠れする降谷零の姿に心臓が反応を示して。

「へえ･･･爆弾に詳しいんだね、安室さん」
「警察学校時代の友人に、色々教えられたんだよ。後に爆発物処理班のエースとなった男に」

透さんの言葉にどこかコナンくんは安心を見せた様子でそう話した。
そして、透さんのその目は、どこか懐かしいものを感じる目に見えて。

表情と警察学校という言葉を合わせれば、彼の思い浮かべている人物は、何となく察しがついた。

ただ、透さんが爆発物に詳しいことは知らなくて。
知っていたのは･･･。

「まあ、結局そいつは･･･観覧車に仕掛けられた爆弾の解体中に爆死したんだけどね」

彼の友人が亡くなっているということだけ。
･･･その理由も、コナンくんとの会話で知る事となった。

「観覧車の爆弾解体で･･･」

嫌な予感を察知するように、徐々に表情を曇らせるコナンくんを横目に見ながら、その傍で黙々とライフルを組み立てていく赤井さんの姿が目に映った。

数時間前にも見たはずの光景なのに、どこか非日常的なそれに、少しばかり目を奪われた。