第72章 悪夢を

「車軸とホイールに、張り巡らせるように仕掛けられてる･･･遠隔操作によるものだとしたら、下手に騒ぎも起こせない･･･」
「ど、どうするの･･･っ」

焦っても仕方が無いことはお互いに分かっている。

だから彼も、それを抑えて淡々と話しているのだろうから。

「･･･赤井さん、ここにいるよね？」

真っ直ぐ見つめる彼の瞳に光が差して。
キラリと光るそれに、一瞬目を奪われた。

捕らわれたようにそれから目が話せなくて、同時に隠し事もできなくなって。

「･･･うん。でも、ここを動くなって言ったきり、どこかに･･･」

そう彼に正直に話し始めた時、何層にもなっている点検台の上の方で、突然大きな音が響き渡った。

それは重たい何かが、転がり落ちるような鈍い音で。

まさか、赤井さんが･･･。

「あそこか！」
「こ、コナンくん･･･！？」

そう思いながら音のした方に目を向けていると、彼は急にその方向へ向かって走り出して。

放っておくこともできず、慌ててその後を追った。

「赤井さん！そこにいるんでしょ、力を貸して！」

音がした真下辺りで足を止めると、コナンくんは上に向かってそう叫んだ。

･･･確かに、今は赤井さんに爆弾のことを相談するのが先決だ。

「赤井さん！聞こえますか！！」

さっきの音、只事では無かったように思うが。
姿こそ確認していないものの、もし本当に彼がそこにいるなら早く返事をしてほしい。

けれど、私の意志とは反対に、呼び掛けに対する反応は返ってこなくて。

「奴ら、キュラソーの奪還に失敗したら、爆弾でこの観覧車ごと全てを吹き飛ばすつもりだよ！」
「返事をしてください、赤井さん･･･！！」

何故応答が無いのか分からない。
けれど、それが余計に不安を煽った。

「奴らが仕掛けて来る前に、爆弾を解除しておかないと大変な事になる！！」

･･･恐らく、キュラソー達もここには着いているはずだ。
どう奪還するのか分からないが、恐らくもう、時間はそこまで残されていない。