第68章 蔑んで※
何度絶頂を迎えただろう。
呂律も回らないくらいに意識が朦朧とし、どの体制になってもおかしいくらいに体が反応して。
喉も枯れてしまうくらい、声をあげて。
もうピクリとも動けなくなる頃、いつの間にか私の意識は遠くの方へといっていた。
ーーー
「・・・・・・?」
ふと目が覚めると、丁寧にベッドで寝かされていて。
目が痛い。
あの時、泣き過ぎてしまったのだろうか。
見た限り、まだここは彼のセーフハウスで。
天井に向いていた視線を横に向けると、殺風景な部屋の中にポツンとある彼のギターが目に入った。
ただ、家主の姿は見えなくて。
「・・・っ」
どうやら痛いのは、目だけでは無いようだ。
寝かされていたベッドから体を起こそうとした瞬間、腰だけでなく、全身が筋肉痛のように痛みを感じた。
「・・・あぁ。そうか、分かった」
「・・・!!」
部屋の向こう側、キッチンのある方から彼の声がボソボソと聞こえて。
その存在がここにあることだけを確認できただけで、そこはかとない安心を感じた。
誰かと電話をしていたのか、声が聞こえなくなった瞬間、こちらに足音が近付いてきて。
顔を覗かせた彼が私が起きていることに気付くと、落ち着いていた表情は一変した。
「ひなた・・・!」
少し慌てた様子でこちらに駆け寄ってくると、ベッドに座る私の傍で膝を着いて。
「大丈夫か?どこか痛むとこは無いか?」
・・・こういう時、何て答えるのが正解なんだろう。
いつもの私なら、大丈夫・・・と言っている。
でもそれは、強がりや心配を掛けたくないという思いからで。
いつだったか、沖矢さんに言われた言葉を思い出すようだった。
「・・・ちょっと、体は痛いかな」
視線を彼から逸らしながら、でも小さな笑顔を作ったまま試すように呟けば、彼の言葉も動きも止まってしまって。
心配を掛けてしまっただろうか、と不安になって、逸らした視線をゆっくり彼へと戻していった。