第64章 戒めて※
「・・・っ、別に・・・ひぁ・・・ッ!」
「嘘は良くないな」
・・・そんなの、今更なのに。
貴方とは嘘だらけで始まって、嘘だらけで固められて。
全てが嘘ではないけれど。
例えこれが嘘だとしても、今更、これくらいの嘘なんて。
「僕だけでは、割に合わないと思わないか?」
これは本当に思っているんだろうか。
それとも何かを試されているんだろうか。
・・・いずれにせよ、私だって。
「・・・っ、してます・・・よ・・・っ」
狂ってしまう程に。
貴方しか見えないくらいに。
忘れてしまいたくなるくらいに。
「零以上に・・・、嫉妬だらけ・・・です、よ・・・っ」
それはあの女子高生だけに限らず。
風見さんにだって。
梓さんにだって。
挙句の果てには、あの組織の人達にだって。
形は違えど、抱いているこの感情全て、嫉妬と言える物だと私は思っている。
ただ、それは常日頃から表に出てくるものでは無い。
開き直りにも近いその言葉を半分ヤケになって吐き出せば、彼の目を見ることもできなくて。
「零、は・・・優しい・・・から・・・っ」
優しい貴方に時々不安になる。
分け隔て無く、誰にだって平等に接する貴方だから。
変なことに流されるような人ではないと頭では思っていても、不安になってしまう。
「・・・誰にだって優しい訳じゃないって」
少なくとも、赤井秀一と沖矢さんにはそうだと知っているけど。
それ以外は・・・。
「んん・・・っ、あ・・・!」
もどかしい彼の指の動きは、更に呼吸を荒らげてしまう。
もっと、と体が咽び泣いている。
そんな状態で会話が続いている方が、奇跡と言えた。
「ひなたには、もう少し自覚してもらいたいところだな」
近付く顔に目を向ければ、またキスが落ちてきそうで。
「僕がどれだけひなたのことを好きなのか」
分かっているつもり、と返す間も無く、言いかけた唇には蓋をされた。
その瞬間、もどかしく動いていた彼の指は、集中的に弱い部分を攻め始めた。