第64章 戒めて※
「れ、い・・・」
ギリギリ、そう言えたと思う。
彼の指は人差し指だけが口内を徘徊していて。
舌を撫であげるように触られると、感じたことの無い感覚がゾワゾワと下から押し上げてくるようだった。
「は・・・んん、ふ・・・ぁ・・・っ」
自然と、その指を絡めとるように舌が這っていた。
たまに鳴るリップ音が卑猥この上無く、駄目な事をしているような感情を大きくさせた。
「・・・ひなた、あまり煽るな」
少し、切羽詰まったような声で。
だけど、私にそんなつもりは無い。
確かに指を舐め上げたのは私だが、最初に指を口内に侵入させたのは彼だ。
でも、彼のこんな余裕の無い表情はあまり見れたものでは無いから。
ここぞとばかりに、見せつけるようにその指を舐め上げてみせた。
その瞬間、フルフルと小さく震えた彼の体を感じて。
「・・・ん・・・」
口内から指が抜かれると、そこから糸が繋がった。
質量を失ったそこは、僅かに寂しさを覚えて。
「や・・・ッ!っんん・・・!」
でもそんな寂しさは束の間だった。
スカートの下から這い上がってきた手は太ももをなぞり、下着の上から秘部を指で押し上げられた。
「れ・・・い・・・っやぁ・・・!」
意識が完全に逸れていた蕾に刺激を受け、恥ずかしげも無く、甘く甲高い声を吐き出して。
「・・・ッ・・・ぁ・・・」
その瞬間、その存在すら忘れかけていた肩の傷が、何かを思い出させるように突然疼き始めた。
まだ、傷は完治しているとは言えないけれど。
もう痛み止めはやめているのに。
どうして、今更。
「・・・ひなた?」
・・・ダメだ。
今、彼に気付かれては。
「な、に・・・?」
痛みを押隠すように、平然を装ってみせた。
その間も鈍い痛みは増す一方で。
バレないかという不安からくる冷や汗と、痛みを我慢して溢れる脂汗が、入り交じって額を滲ませた。