第52章 居場所
「しかも、奴には僕が公安だとバレてしまった」
・・・まさか、それもまた私のせいでは。
知らず知らずのうちに、昴さんやコナンくんに情報を渡していて、それが決め手になってしまったのではないか、と。
そんな不安が過ぎった。
「・・・あ、ひなたさんは関係ありませんよ」
それは顔に出てしまっていたようで、彼と視線が合った瞬間、小さく笑われながらそう言われたのを見て、思わず恥ずかしさから視線を逸らした。
「全てはあの少年にやられた」
ソファーに体を預け、天を仰ぎながらため息混じりにそう漏らした。
それでも口角を下げない彼を見て、コナンくんを少なくとも煙たがったり敵だと思ったりはしていないことを察して。
その存在は私の中で幾度と無くチラつき、謎を増やしていく。
やはりコナンくんとは・・・今一度話をする必要がありそうだ。
「そういえばさっき、毛利探偵に近付く為にポアロで働いてるって言ってましたよね・・・?」
「ええ」
「それは何の為か・・・聞いても良いですか?」
毛利探偵は組織とは何の関係も無いはずだが・・・。
もしかして彼も・・・?
「・・・ミステリートレインで、僕とシェリーの話は聞いているんですよね」
ソファーの上で体制を整えながら、そう問われた。
もう今更、その辺りは誤魔化したって仕方の無いことだ。
「・・・はい」
その頃から彼がバーボンだと知っていたということが、彼に伝わってしまった。
それまでに吐いた嘘が許されるかどうかは分からないが、それまでの罪悪感をこれから背負うことはもう無いんだと思うと、心無しかすっきりとした気持ちで。
「秘密を持ち過ぎているシェリーを組織は血眼になって探し、見つかり次第、彼女を消そうとしている。そうなる前に、公安で保護してできる限りの情報を手に入れようとした」
・・・が、それは昴さん達の作戦によって失敗に終わったということか。
まあ、その時は彼がバーボンという情報しか無かったから、シェリーが殺されると思っていた為、仕方ないと言えばそうなのだけど。