第51章 真実を
「貴女に接していたのは確かに安室透でしたが、同時に降谷零でもありました」
・・・その意味は、分からなくも無かった。
彼が安室透や降谷零という人間だったとしても、私には彼という一人の人間として映っていた。
「でも、降谷零という人間は公に出ることができません」
・・・そっか、降谷零は公安の人間だから。
ましてやスパイとして潜入している警察官という、素性を知られる訳にはいかないということか。
「だからこれからも、一緒に居るなら降谷零ではなく、殆どは安室透として貴女に接することになります。それでも貴女は・・・傷つきませんか?」
傷付く?
安室透として貴方と過ごすことが?
「傷付く要素がありません」
傍に居られるなら何だっていい。
私は彼自身を愛しているのだから。
安室透でも、バーボンでも、降谷零でも。
それは全て彼だから。
貴方だけを愛しているから。
「降谷零さん、貴方を愛しています」
きっと、昨日の彼がそうなんだろうな、と思い出しながら彼の頬にそっと手を添えて。
やっと、心から笑えた気がした。
ずっと心のどこかに突かえていた何かが、外れる音がしたようで。
「僕も・・・愛しています」
それを言い終わる頃には、互いの唇が触れ合っていて。
何度も舌を絡め合わせて。
離しては口付けて。
お互いの存在を認め合うように、長い時間を掛けてキスをした。
キツく抱きしめ合えば、それは激しさを増していくようで。
何も言わないまま、たまにお互いの視線も絡ませては何度も何度も互いを確かめ合った。
ーーー
あれからお昼を済ませ、透さんがコーヒーを入れてくれて。
またこんな日が来るとは思ってもみなかった。
非日常の中にある僅かな日常を噛み締めながら、彼とお揃いのカップを受け取って。
「あの・・・透さん」
「はい?」
ソファーに腰掛けながら彼が返事をして。
彼が安室透では無く、降谷零ならば、一つだけ確認しておきたい事があった。