第39章 追求心
「そうなのよね、そこが私もコナンくんも気になってて」
今までの少し重苦しい空気とは反転して、気の抜けたような言い方でジョディさんがため息混じりにそう言った。
彼女もコナンくんもそう思うということは、組織が私を泳がせているのか、それとも私には殺す価値も無いと思われたか。
若しくは・・・何らかの理由で接触途中か。
「でも、早く動くことに越したことはないわ」
赤信号で止まったところで、こちらに顔を向けられて。
「・・・・・・」
何も言葉が出なかった。
想像もできないことに、すぐに首を縦に動かすことはできなくて。
「・・・デメリットは無いんですか?」
正直、今聞いたところでは私にとってデメリットしか無いが。
もしそれを受けたとすると、国籍を変えるなら日本には居られなくなるんだろうし。
「そうね・・・国が貴女を全力で守る代わりに家族や友人と会うことは勿論、電話もすることはできないわ。それが大きなデメリットかしら」
家族は私にはもういない。
友人と呼べる人も殆どいない。
ただ一人だけ、友人でも家族でもないけど、そうなりたくない人はいて。
「でしたらこのお話、お断りします」
考える間も無く、力強くそう答えた。
それを受ければ組織から完全に逃げられるかもしれない。でも私は組織から逃げることを目的とはしていない。
それに。
「透さんと会えなくなるのは・・・嫌なので」
例え彼がバーボンで、私の命を一番狙っている人物だったとしても。
彼と会えなくなるくらいなら、彼に殺された方がマシだ。
「・・・貴女が承認保護プログラムを受けないことで、被害を受けるかもしれない人物がいるとしても、かしら?」
それは恐らくコナンくんを指しているんだと思った。勿論、私に関わるそれ以外の人達にも。
もし私が下手に動いて、コナンくん達と繋がりがあると知られたら・・・。
沖矢さんが組織について調べていることがバレたら・・・。
「・・・それでも、私は受けたくありません」
我儘だということは分かっている。
分かった上での我儘。
これまでの私の考えや認識はかなり甘かったことを、ジョディさんに諭された瞬間だった。