第118章 番外2※
「・・・・・・」
けれど、こちらからの呼び掛けに返事は無く。
扉の先から、物音すら聞こえなくて。
「零・・・?」
改めてもう一度、今度は先程よりも大きな声で呼んでみたけれど、結果は同じで。
これが違和感の先の正体なのかと、僅かに恐怖のようなものを感じ、ドアノブに手を掛けた。
「入るよ?」
許可は取らない。
強制執行に近い。
一応断りだけは入れて、いつもより早めにドアを開いた。
その瞬間目に飛び込んできたのは、洗面台へと手をつき、深く俯くようにしている彼の姿で。
それが異常な姿だと判断するまでは、本当に一瞬だった。
「零!」
先程よりも顔色は悪く、額には冷や汗が滲んでいて。
それらを確認すると、こちらも嫌な汗がドッと吹き出てきた。
「ひなた・・・」
返事をするのがやっと、という雰囲気で私を横目に確認すると、彼は縋るように私の腕を力強く掴んだ。
・・・苦しそう、なのにどうすれば良いか頭が回らない。
とにかく今は呼吸が乱れているため、横にさせてあげるのが先決かもしれない。
そう判断すると、彼の腕を自分の肩へと回し、心許無い力で体を支えながら寝室へと向かった。
「・・・ッ」
力を失った人間を運ぶことが如何に難しいことか。
今、それを強く痛感する。
どうにか時間は掛かったが、彼を寝室のベッドへ運ぶことに成功すると、そのまま体をそこに転がした。
「ま、待ってて・・・風見さん・・・」
息を切らしながら、一人ではこれ以上どうすることもできないと判断し、連絡の為にスマホを取りに動こうとした瞬間。
「・・・ッ!?」
無防備なままグンッと引っ張られた腕で体は簡単にバランスを崩し、そのままベッドに倒れ込むように体を落とした。
「れ・・・っ」
驚きつつも、誰がそうしたのかは明白だ。
その人物の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間、気付けばそこは彼の唇で塞がれてしまっていた。