第117章 安室3
「た、高木刑事!そろそろ行かなくて大丈夫?」
僕にそれ以上情報を与えないようにする為か、小さな探偵くんは慌てた様子で口を挟んで。
「え?うわ、ホントだ・・・!じゃあ僕はこれで!」
その言葉にハッとした高木刑事は、着けていた腕時計に視線を落とすと、彼もまた慌てた様子を見せながら病院内へと姿を消して行った。
「そういえば皆さん、こちらにはどうやって来られたんですか?」
・・・さて。
これから調べることも、すべきことも増えたようだ。
でもまずは、彼女を送り届けることが先決だろう。
「俺は走って・・・」
「僕は蘭姉ちゃんとタクシーだよ」
まあ、この距離であればそれらが妥当だろう。
1番確認すべき彼女も。
「ひなたさんは?」
「・・・え?」
「ひなたさんはどうやってここまで?」
タクシーで来たのだから。
「た、タクシーで・・・」
「ほぉ、じゃあ皆さん僕の車に乗っていかれます?」
幸い、狭いが乗れない人数ではない。
ただ、僕の車に乗ればどうなるのか。
それは彼女も多少察しがついているはずだ。
なるべく笑顔で和やかに誘ってはみるが、今の彼女にとって僕がどんな表情を浮かべたって、驚異になるのだろうな。
そう思いながらポケットにしまっていた車のキーを握り締めた瞬間。
「いいの?ゼロの兄ちゃん」
どこか挑発的な笑顔で僕を見上げ、小さな探偵は引っ掛かりを覚える呼び方で僕に返事をした。
「ああ、勿論だよ。ひなたさんもどうぞ」
内心、どこかで動揺した。
顔には出さなかったとは思うが。
ゼロ、という言葉に彼もまた・・・何か察したのだろうか。
ただ僕以上に慌てている人が隣にいる為か、冷静さは保たれたままだった。
「・・・ありがとうございます。では、お言葉に甘えて」
遠慮気味と言うよりは、どこか致し方無く、といった雰囲気で彼女も了承して。
・・・それについては多少我慢してもらわなければならない。
少なくとも、彼女を安全な場所に移動させるまでは。
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