第117章 安室3
「どうしたんです?皆さんお揃いで」
「ちょっと女房がな・・・」
分かりきった質問を、白々しく。
これくらいの嘘は、もう何とも感じない。
そもそも僕の存在自体が嘘の塊なのだから。
「ひなたさんはどうしてこちらに?」
これもそうだ。
ここに呼び込んだのは紛れもない僕で。
彼女もやはりそれを感じ取っていたのか、僕を見つめる表情は強ばる一方だった。
「たまたまコナンくん達と会って、妃さんが手術をしたと聞いたので・・・」
たまたま、か。
深く追求すれば、隣にいる探偵くんが助言するのだろう。
それもまた見てみたいところではあるが、今はこの言葉で納得することにしよう。
「透さんはどうしてここに?」
「知り合いが入院してるって聞いて見舞いに来たんですが、いつの間にかいなくなってしまったみたいで」
・・・この小さな探偵は、何か知っているようだから。
コナンくんに顔をグッと近付けると、煽るように笑みを浮かべて見せた。
「コナンくんは前にもここに来たことがあるって看護師さん達が言ってたけど、知ってるかな?」
彼が一体何者なのか。
深く追求したくなるのは、僕の単純な追求心だろうか。
「楠田陸道って男・・・」
そして、色々と・・・試してみたくなる。
その端くれが見え隠れしたのか、彼に僅かな情報を出してみせた。
先程彼女と話していた内容がそれなのだとすれば、少なからず反応を見せるはずだが。
「誰?それ・・・知らないよ?」
子供らしい声色での返答。
それに思わず、口角を上げてしまった。
「実はその男にお金を貸してて、返してほしいんだけど・・・ホントに知らないかい?」
「うん!」
普通のひとであれば、可愛らしい子どもの返答だろう。
そもそも、子どもに尋ねる僕の方がおかしい目を向けられるだろう。
・・・けど、それは。
「すごいね、君は・・・」
彼が本当にただの子どもだったら、の話だ。