第117章 安室3
『・・・出発したようです』
2人はそれなりの繋がりがある。
ただ、あの男の目的が未だはっきり分からないのが腹立たしい。
「追ってくれ。ここからは風見の車だけで追跡だ」
『了解しました』
あの男がどれ程のものなのか。
小さな探偵と繋がりがないとも言えない。
まだまだ探りは必要だろうが、その前に彼女にもけしかけなければならなくて。
『対象、高速に乗るようです』
・・・成程、もう気付いたか。
彼女とは違い、警戒心はそれなりにあるようで。
「そのまま追い回せ」
ただ、追われているということを、あの男にではなく彼女に知らしめる必要がある。
『振り切られそうですが・・・っ』
彼女にはもっと、自覚を持たせるべきだ。
「まだだ。完全に振り切られるまで、追え」
どれ程危険なことに首を突っ込み。
どれ程危険な人物に、関わろうとしているのか。
・・・その上で、行動してほしい。
『く・・・っ』
電話越しに、車のエンジン音が聞こえる。
風見には程々に、と言っているが、公安の追跡をかわせる程だということが知れたのも、ある種の収穫かもしれない。
『・・・見失いました』
「分かった、ご苦労だったな」
あれ程の運転をすれば、彼女に気付かれず追跡をかわすことは困難だろう。
追跡されたという事実に彼女は嫌でも気が付くことになる。
「・・・さあ、どう出てくる」
それでも尚、きっと彼女は行動を起こしてくるはずだ。
恐らく、早ければ明日にでも。
・・・少しは、警戒心を働かせてくれれば良いが。
ーーー
「・・・・・・」
次の日の朝。
僕の視線は起きた瞬間から、ほぼスマホへと向いていた。
そこに映し出されている映像は、事務所の監視カメラのもので。
風見や、他の捜査員にも監視や見張りはつけているが、自分自身の目で彼女が動くことを、確認しておきたくて。
・・・できれば来ないことを、願いたいものだが。