第116章 安室2※
彼女の行方が分からなくなった上、梓さんを通じて暫くポアロを休むという連絡があったと言われた。
僕に連絡が無いことを考えれば、こちらを避けているのはほぼ間違いがない。
・・・こうなれば、リスクはあるが多少こちらも大胆な手に出る他ない。
彼女が沖矢昴と手を組み、僕の何かを探っているのであれば・・・事務所に忍び込む可能性があると考えた。
鍵を変えれば、彼女は合鍵を持っていても入ることはできない。
そうなれば、ピッキングができる者か、強行突破をする仲間を連れて来るはずだ。
まさか彼女自身がピッキングをして侵入するとは、この時は考えもしていなかったが。
それは、僕の落ち度だ。
「・・・よし」
とりあえず、事務所の鍵を取り替え、精度の良い監視カメラを隠すように取り付け、いくつかのファイルを色々な場所に仕込んだ。
恐らく、彼女やその仲間がここに忍び込んだとしても、十数分で手を引くだろう。
それ以上はリスクが高まる。
その為、同じ内容のファイルをいくつも場所を変えて隠して配置をした。
わざと彼女に見つけさせる為に。
「・・・・・・」
もし、仮に。
沖矢昴と彼女が手を組んでいるのなら。
理由は・・・本田冬真の死の真相。
もしくは・・・僕への疑い。
はたまた、そのどちらもか。
もし、彼の死の真相を追い求めているのであれば・・・組織に近付く事になり、彼女に更なる危険が伴う。
そしてその最中、僕が組織の人間かもしれないということを掴み、距離を置いている。
そうも、考えられた。
今は、彼女が何を知りたいのか。
それを掴んでみることから始めた。
ここに忍び込んできた所を、無理に保護することはできる。
けど、彼女はそれを望まないだろうし、こちらもしたくはない。
下手に動けば、僕が公安の人間だということも組織にバレかねないからだ。
とにかく穏便に。
今は小さく餌を撒きながら、彼女を誘き寄せるしかなかった。