第116章 安室2※
「ああ、貴方は先日ひなたさんを助けた・・・と見せかけてひなたさんに言い寄っていた方ですね」
「ち、違います!」
挑発的に沖矢昴へとそう言い放てば、何故か彼女の方が否定の言葉を挟んで。
・・・やはり、沖矢昴とは何らかの関係を持っていると考えて、間違いはないようだ。
それに対してやけに苛立ちが募るのは・・・私情だろうか。
「僕はあの日たまたま通りかかっただけの者ですよ」
僕の言葉も大概ではあったが、この男の言葉は何もかもが白々しい。
「そういうことに、しておいてます」
一応、彼女もそうだとは言ったけれど。
信じろと言う方が難しい。
一進一退の中、そわそわと落ち着きを無くしてきた彼女を横目に、こちらも多少あった焦りを静かに大きくさせた。
「それより、こんな場所でなくても部屋で二人の時間を楽しめば良いのでは?」
そして、僕の怒りの火に油を注ぐように、沖矢昴はそんなことを言ってきて。
「貴方には関係のないことですよ」
・・・この男、どういうつもりでそんな言葉を吐いているのだろうか。
恐らく沖矢昴は、ひなたさんと彼が一緒に乗車している事実を僕が把握していると・・・気付いている。
僕の・・・冷静さを崩す為の作戦か?
・・・何の為に。
「わ、私の部屋が分からなくなって・・・迷子になったんです・・・」
またしても突然、彼女は言葉を挟んだが、その瞬間の沖矢昴の目線を見逃しはしなかった。
一瞬、男の目は僕の背後を見るような動きを見せた。
その瞬間、背後にいる彼女が言葉を発した。
それが意味するのは、何となく分かったが。
・・・できれば、信じたくはなかった。
この男とひなたさんが、アイコンタクトで話をするなんて。